業界研究は、言葉の意味を覚える作業ではありません。ゴールは、志望業界の候補を3〜5個に絞り、各業界が「誰から・何の対価でお金を得ているか」を1文で言え、自分に向いていそうかを説明できる状態になることです。まずはこのゴールに至る4ステップの地図と、「ここまでやれば終わり」の終了条件を先に見てください。終わりの形が見えていれば、途中で「まだ足りないのでは」と不安になって止まることがなくなります。
この記事でわかること:
- 業界研究の4ステップと「終わったと言える条件」
- 自己分析と業界研究、どちらを先にやるべきかの答え
- 儲けの仕組みを1文にする作業手順と、1業界15分のノートの書き方
業界研究の4ステップと「終わったと言える条件」
業界研究は、次の4ステップで進めます。上から順に1周し、気になる業界が出てきたらその業界だけステップ2以降を深めます。
| ステップ | やること | 所要時間の目安 |
|---|---|---|
| 1. 全体像 | 世の中の業界を「誰から儲けているか」で大づかみに分類する | 60分 |
| 2. 儲けの仕組み | 気になる業界の稼ぎ方を1文で言い切る | 1業界15分 |
| 3. 職種と働き方 | その業界の代表職種と働き方(繁忙・転勤・専門性)を調べる | 1業界20分 |
| 4. 3社比較 | 本命業界の同業3社を並べ、違いを言葉にする | 本命のみ40分 |
ポイントは、全業界を深掘りしないことです。ステップ1で全体像をつかんだら、ステップ2以降は「気になった業界」だけに絞ります。数万社を一度に理解する必要はありません。
そして、業界研究が「終わった」と言えるのは、次のチェックリストがすべて埋まったときです。これが埋まれば、その先はエントリー企業が決まってから個別に深掘りすればよく、今この段階でこれ以上やる必要はありません。
- 志望業界の候補を3〜5個に絞れている
- 各業界が「誰から・何の対価でお金を得ているか」を1文で言える
- 各業界の代表的な職種を3つ挙げられる
- 各業界の「向いていそうな点・合わなそうな点」を自分の経験と結びつけて話せる
- 「なぜこの業界か」を自己分析の結果とつなげて30秒で話せる
多くの就活生が業界研究で消耗するのは、この終了条件を持たずに「もっと調べなきゃ」と延々と続けてしまうからです。ゴールを先に固定すれば、業界研究は数日で一区切りできます。
自己分析と業界研究、どちらを先にやるべきか
結論から言うと、厳密な順番はなく、並行で進めるのが正解です。ただし、どちらか一方に少し先行させるなら「自己分析を半歩先に」始めてください。
理由はこうです。業界研究は「どの業界が自分に合うか」を見極める作業ですが、その判断には「自分は何を重視するのか(=軸)」という物差しが要ります。物差しがないまま業界を眺めても、「なんとなく良さそう」以上の判断ができません。だから、自己分析で軸の材料を先に少しだけ作っておくと、業界研究の効率が跳ね上がります。
一方で、自己分析を完璧に終わらせてから業界研究に進む必要はありません。むしろ逆効果です。業界を知ることで「こういう働き方があるのか」と気づき、それが自己分析の材料になることも多いからです。両者は往復させるものだと考えてください。
現実的な進め方はこうです。
- 自己分析で「熱中した経験・消耗した経験」を各5個書き出す(60分)。詳しい手順は自己分析のやり方にあります
- その材料から仮の軸を2〜3個作る(就活の軸の決め方)
- その軸を物差しに、本記事の4ステップで業界を仕分ける
- 気づいたことを自己分析に戻して軸を更新する
「順番で悩んで動けない」が一番もったいない状態です。今日は自己分析の棚卸しと、業界の全体像(ステップ1)を両方少しずつ進めれば十分です。
そもそも業界研究とは何か
ここまで手順を先に見てきたので、定義は短く済ませます。業界研究とは、世の中のビジネスを「業界」という単位で分類し、それぞれの稼ぎ方・プレイヤー・働き方・向き不向きを理解する作業のことです。
目的は3つあります。
- 志望業界を絞るため:知名度だけで選ぶと、エントリーが増えるほど志望動機が薄まります
- 志望動機に説得力を持たせるため:業界の構造を理解した志望動機は、自己分析・企業研究と噛み合い、他の就活生と差がつきます
- 入社後のミスマッチを防ぐため:「思っていた仕事と違う」を選考段階で減らせます
定義や目的を覚えることが目的ではありません。目的はあくまで、冒頭の終了条件チェックリストを埋めることです。ここから、それを埋めるための各ステップに入ります。
ステップ1:業界の全体像をつかむ(誰から儲けているかで分類)
最初にやるのは、世の中の業界を大づかみに分類することです。ただし、業界名を暗記する必要はありません。見るべきは「その業界は誰からお金をもらっているか」という1点です。この視点で分けると、業界は驚くほど整理されます。
| 大分類 | 主にお金を出す相手 | 例 |
|---|---|---|
| メーカー | 消費者や他企業(作った物の対価) | 自動車・食品・化学・電機 |
| 商社・卸 | 取引先企業(仲介・調達の対価) | 総合商社・専門商社 |
| 小売・サービス | 消費者(販売・体験の対価) | 百貨店・外食・旅行 |
| 金融 | 個人・企業(お金を動かす対価) | 銀行・証券・保険 |
| インフラ・公共 | 利用者(電気・通信・輸送の対価) | 電力・鉄道・通信 |
この段階のゴールは、「少しでも面白そう」と感じる業界を5〜8個ピックアップすることです。深く知る必要はまだありません。興味の網を広めに張り、次のステップで絞り込みます。個別の業界像は、たとえばIT業界研究や金融業界研究のような業界別の記事で確認できます。全体像→個別のズームインで進めると迷いません。
ステップ2:気になる業界の「儲けの仕組み」を1文にする
業界研究で最も差がつくのがここです。ピックアップした業界について、「誰から・何の対価で・どう稼いでいるか」を自分の言葉で1文にするという作業をします。これができると、志望動機が一気に具体的になります。
言い切りの型はこうです。
【この業界】は、【誰】に【何】を提供し、【何の対価】でお金を得ている。
3つの業界で例を作ってみます。
- 総合商社は、資源やインフラなどの事業に自ら投資し、その事業から得る利益と、企業間の取引を仲介する手数料でお金を得ている。
- 人材紹介は、採用したい企業に対して求職者を紹介し、採用が決まったときに企業から成功報酬を得ている(求職者は無料)。
- BtoBメーカーは、最終消費者ではなく他の企業に部品や素材を売り、その物の対価でお金を得ている。
ここで大事なのは、「誰がお金を払っているか」を取り違えないことです。たとえば人材紹介は求職者ではなく企業がお金を払います。無料で使えるサービスほど「本当の顧客は誰か」を確認すると、その業界の力学が見えてきます。この1文が言えれば、面接で「なぜこの業界か」を聞かれても構造から答えられます。